「頭の良い人になりたい!」と言って、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングなどの「思考法(考え方)」を学ぶ人は多いですが、自分の「思考体力」を鍛えようという人はそれほど多くありません。
スポーツと同じで、技術(考え方)だけを学ぶのではなく、それと同じくらいに精神や肉体(思考体力)を鍛えることが、ビジネスで成功する秘訣です。
当記事では、
- 思考体力とは何か?
- 思考体力を鍛えるメリット
- 思考体力を鍛えるおすすめの方法
- 思考体力を鍛えるおすすめの本
について解説します。
思考体力とは?
思考体力とは、簡単に言うと「考え続ける力(思考持久力)」のことです。
持久力と言っても、「1時間ずっと考え続けられた!」など、時間を競うものではありません。ある課題に対して、いかに深く、多面的に考え続けられるかということです。
優秀な人、頭の良い人と言えば、「頭の回転」や「知識量」をイメージしますよね。しかし、実はそれと同じかそれ以上に、優秀であるには思考体力も必要になるのです。
思考体力を鍛えるメリット
なぜ優秀であるには思考体力が必要なのか。
それは、思考体力を鍛えることで以下のメリットが得られるからです。
- 集中力が長時間持続する
- ストレスが溜まりにくくなる
- 意思決定で失敗しにくくなる
1つずつ解説しましょう。
集中力が長時間持続する
思考体力のある人は、長時間に渡って高い集中力を維持しながら、考え事をしたり作業をしたりできます。
マラソンをイメージしてもらえればわかりやすいですが、体力のない人だと疲れてきたら走るペースが遅くなったり、あるいは走ること自体を止めてしまいますよね。
思考体力も同じで、思考体力のない人だと何かし始めてもすぐに頭が疲れて、考え事や作業を中断して別のことをしてしまいます。
あらゆる物事のパフォーマンスは「時間×質」で決まりますが、思考体力は時間と質の両方に影響を与える要素なので重要なわけですね。
意思決定で失敗しにくくなる
思考体力のある人は、短絡的に答えを出したり、1つの視点だけで意思決定するようなことはしません。
一旦それらしい答えが見つかったとしても「本当にこれで合っているのだろうか?」と、自分の考えに批判的な目を向け、もう一度ゼロベースで本当の答えについて考えます。
そうしていくつかの代替案を出した上で、それぞれの案を比較検討して最終的な答えを出すので、意思決定で失敗しにくくなるのです。
思考体力のない人(めんどうくさがりの人もですが)は、最初の案ですぐ意思決定してしまうので、答えが短絡的になったり、妥協案になったりしやすい傾向にあります。
ストレスが溜まりにくくなる
思考体力が高い人は集中力が高く、意思決定しにくくなるので、必然的に人生の悩み事が消え、ストレスが溜まりにくくなります。
適度なストレスはプラスな影響を与えることが知られていますが、ほとんどの場合、ストレスは人生の幸福度を下げる1番の原因です。
幸せな人生を送りたいならストレスを溜めないこと。ストレスを溜めないためには、ストレスを溜めない方法を考え、ストレスの原因を消すこと。
「筋トレが最高のソリューションである(テストステロン)」なんて言われたりしますが、心も体も頭も、鍛えることでさまざまな問題が解決します。
思考体力を鍛える方法
思考体力という言葉は、42歳で東大教授になった西成活裕さんの著書「東大人気教授が教える 思考体力を鍛える」で有名になりました。
この本では、思考体力を以下の6項目に分解し、それぞれの能力を鍛える方法について解説しています。
- 自己駆動力・・・行動を促すエンジン部分
- 多段思考力・・・思考の階段を上り続ける
- 疑い力・・・立ち止まり、思考のループを回す
- 大局力・・・時間と空間をみわたす
- 場合分け力・・・選択肢に迷ったら
- ジャンプ力・・・これ以上進めないときに
ここからはそれぞれの能力について簡単な解説と、鍛え方について解説します。
主体的に行動する(自己駆動力)
思考体力を身につける上で1番大切なのが「自己駆動力(主体性)」です。
他人から何か言われて行動に移すのではなく、自分の意思で行動に移す力。
7つの習慣においても「主体性」が重要項目として第一に挙げられていますが、自分で行動を起こす力は思考体力に限らず幸せな人生を送るための第一原則と言えます。
具体と抽象で考える(多段思考力)
多段思考力とは「物事を段階的に整理して考える能力」です。
細谷巧さんの「具体と抽象」にあるように、具体と抽象の段数を合わせることで、人との対話がスムーズになります。
マラソンで疲れない呼吸法があるように、考え方にも疲れない考え方があります。
具体と抽象を整理して考えることで、余分なエネルギーを使わず、思考体力を温存しながら物事を考えることができます。
批判的に考えてみる(疑い力)
最初に出た答えや、長い間信じられていた常識に対して批判的に考えてみましょう。
この考え方はクリティカルシンキング(批判的思考)と呼ばれ、多くのビジネスパーソンが使いこなす考え方の1つです。
常識や前提にとらわれず、意思決定する際に「本当にそうだろうか?」という批判的な目を向けることで、失敗しない意思決定をする練習になります。
俯瞰して考える(大局力)
大局力とは、「物事の全体を俯瞰して見る・考える力」のことです。
考えても答えが出なくて苦しいとき、これ以上考えられないとき、無意識のうちに視野が狭くなっていることはありませんか?
視野が狭くなって俯瞰的に考えられていないと、多段思考や批判的思考もできなくなります。
考えが停滞しているなと感じたら、一度全体を俯瞰してみることを忘れないようにしましょう。
前提を整理する(場合分け力)
場合分け力とは、「物事を場合分けして、それぞれのパターンについて別々に考える力」です。
VUCAと言われるように、現代は複雑な時代です。そのような時代で状況を整理するのはそれなりに骨の折れる作業ですが、思考体力のある人は「場合分け」の考え方を使って、効率的に状況を整理して考えます。
例えば、マーケティング施策を打つときにも、好況のときと不況のときでは施策の内容が変わってきますよね?
ここで例題を1つ出しましょう。
例題
この問題に対して、私たちは何から考えれば良いだろうか?
答え
答えは「Aという施策が『上手くいく場合』と『上手くいかない場合』を場合分けして考える」です。
間違っても、「Aという施策は良い施策だったかどうか」なんて抽象的な議論はしないでくださいね。
ちなみに「場合分け力」はロジカルシンキングを学ぶことで鍛えることができます。
考えを寝かせる(ジャンプ力)
真剣に考えても答えが出ないときは、一度考えを寝かせるのも有効です。
ラッセルやアインシュタインなどの有名人をはじめ、全世界で読まれているジェームス・ヤング名著「アイデアのつくり方」でも、考えを寝かせる重要性について書かれています。
歴史に名を残すエリートも、この記事を読んでいるあなたも、良いアイデアを思いつくために必要な要素は2つだけ。
- 深くて長い思考時間(思考体力)
- 何も考えない時間(考えを寝かせる)
考え方や知識は、これらをサポートする補助に過ぎません。
思考体力を鍛えるのにおすすめの本3選
思考体力は日常の習慣でも鍛えられます。その中でも特におすすめなのが「読書習慣」です。
というわけで思考体力を鍛えるのにおすすめの本を3冊ほど紹介しておきます。
東大人気教授が教える 思考体力を鍛える
先ほど紹介した西成活裕さんの著書ですね。「元祖思考体力本」です。
先に挙げた思考体力の6要素についてより細かく詳細に解説しているので、思考体力についてより具体的に理解できるでしょう。
思考体力の定義や概念、必要性についてちゃんと整理して学びたい人におすすめの本です。
採用基準
マッキンゼーの採用基準について書かれた本です。
一見すると思考体力と関係がないように思えますが、マッキンゼーの採用基準の中に「思考体力」という項目があるそうで紹介しました。
超一流企業は、仕事の中でどのように「思考体力」を評価しているのか知りたい人におすすめの本です。
思考の整理学
言わずと知れた思考法の名著「思考の整理学」です。
東大・京大で1番売れた本と言われ、日本を未来を背負うエリートたちが、考え方の基礎を学ぶ本として高く評価している1冊。
まずは頭の中のもやもやを整理して、疲れにくい頭を手に入れたい人におすすめの本です。
まとめ
今回は「思考体力とは何か?」「思考体力を鍛えるメリット」「思考体力を鍛えるおすすめの方法」「思考体力を鍛えるのにおすすめの本」について解説しました。
思考体力は思考法や知識と違って、一朝一夕で身につくものではありません。繰り返し繰り返し、日々の習慣として血肉にすることで身につきます。
人生というマラソンの後半でへばりたくなければ、今のうちから少しずつ鍛えておきましょうね。
では、また。